子供を守る社会へ 2013.12.7 青山修

    今週、いわゆる婚外子の法定相続分を婚内子の2分の1としている規定を削除する改正案が参議院本会議において全会一致で可決されました。※削除される該当箇所については、文末の参考条文の赤字部分を参照ください。

 婚外子とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子の事で、発音しにくい言葉では非嫡出子(ひちゃくしゅつし)と言います。誤解されている方も少なくないようですが、婚外子とは少なくとも認知はされている子です。認知されていない子には相続権自体ありませんので、今回の改正と直接の関係はありません。

 私は行政書士という仕事柄、相続に関するご相談を受けます。ご依頼を頂いて、いざ古い戸籍を調べてみたら、認知された子が見つかったというケースは少なくありません。ですから、特に相続問題の渦中にある方々に様々な思いがある事は十分承知しているつもりです。しかし法律としては、ようやく本来あるべき姿になったと思いますし、これまで長きにわたり法律上差別的な取扱いがされてきた事に合理的な理由はないと考えています。

 出生における親の事情に関して、子供には何の責任もありません。自らどうする事もできない事情によって、法律上差別される事など許されるべきではありません(でした)。

 また法律では、婚外子であるか婚内子であるかを問わず、子には親を扶養する義務が課されています。婚外子にも親の扶養義務はあるにも拘わらず、法定相続分は婚内子の半分とされてきたのです。この点だけをみても、明らかに不平等なルールであったことが分かりますね。※扶養義務に関する民法第877条については文末を参照ください。

 しかしながら、今回の改正は中途半端なものと言わざるを得ません。今回の改正では、出生届を出す際に『婚外子か否か』の記載を義務づけた規定を削除する戸籍法の改正が見送られてしまったからです。法定相続分に関する取扱いは平等となったものの、出生届を出す際に、『婚外子という烙印を押す』差別的取扱いは依然として残ったままなのです。

 法務省のHPに出生届の記載例が掲載されていますので、皆さんも是非ご覧になってお考え頂きたいと思います。※『子の氏名』欄の右横に『父母との続き柄』という欄があります。http://www.moj.go.jp/content/000011715.pdf 

 このように大人達が決めた残念なルールを別にしても、子供達は多かれ少なかれ様々な不平等に対峙して生きていかねばなりません。そして否応なしに厳しい競争に晒されます。もちろん自分の志や努力で克服できる事は、精一杯自らの力を尽くすべきでしょうが、生まれ落ちたと同時に、わざわざ国が『婚外子』という不合理な烙印を押す必要がどこにあるというのでしょうか?

 子供達を取り巻く環境は大きく変化しているようです。昭和40年代生まれの私のように、来る日も来る日も日が暮れるまで外で遊び、帰宅時間が遅くなった言い訳を考える事くらいが悩みだったような時代とは状況は異なります。

 今の子供達は、最早犯罪の域に達しているいじめ、複雑化する人間関係、将来への不安、氾濫する情報等の影響もあり、従前の時代と比べても遥かに制御不能な環境下に置かれているように感じます。明るい未来を担う子供達の為に、大人である私達が精一杯知恵を絞り、議論を尽くして子供達を守る社会を作っていきたいですね。

【参考条文】

(法定相続分)
民法第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
1 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
2 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
3 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
4 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。

(扶養義務者)
民法第877条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

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