遺言書のススメ  2016.1.6 青山修

 昨年を振り返ってみますと、『遺言書を作成したい』というお客様が多い一年でした。相続税のハードルが下がった影響もあるでしょう。また、新聞やテレビ等においても遺言書が取り上げられる事が増えているように感じますし、実際、遺言書を作成される方は増加傾向にあります(日本公証人連合会HPhttp://www.koshonin.gr.jp/osi.html#20)。少しずつではありますが、ようやく我が国においても、遺言書が市民権を得つつあるのかもしれません。

 映画『市民ケーン』では、冒頭、新聞王 Charles Foster Kane が『薔薇の蕾』という謎の言葉を遺し、亡くなるところから物語が始まります。映画としては最高傑作に挙げる方も多い作品ですが、遺言としては残念ながら最低でした。そもそも口頭だけでは困りますし、しかも『薔薇の蕾』って。とはいえ謎の言葉だからこそ物語が展開していくわけですが。

 最近話題になる事が増えたとはいえ、一般的な感情としては『遺言書なんて本当に必要なの?』というのが正直なところではないでしょうか。こればっかりは『必要(だと思います)』としか答えようがありません。とはいえ無理に薦める類のものでもありませんので、遺言書とは一体どういうものなのか、基本的な所から始めてみましょう。

◆遺言書にはどんな事が書けるの?
 遺言書に書く事は、何もお金や財産の事だけではありません。ざっと列挙してみます。
・特定の相続人に財産を相続させたい
・相続人ではない人に財産を贈りたい
・団体や法人に寄附をしたい
・葬儀、埋葬方法に関する希望がある
・お墓の管理をお願いしたい
・献体、臓器提供をしたい
・事業を承継させたい
・認知症の配偶者の世話をして欲しい
・病弱な子供の世話をお願いしたい
・婚外子を認知したい
・未成年の子供に後見人を指定したい
・ペットの面倒を見て欲しい
・生前お世話になった人に恩返しがしたい
・面倒な手続きをまるごとお願いしたい

◆遺言書が必要な人とは?
 答えは『全ての人(だと思います)』です。貴方も、私も、向こう三軒両隣、それ以外の人も全てです。懲りずに例を挙げてみましょう。
・相続人が多い人
・相続人がいない人
・子供を持たない夫婦
・複数の子供を持つ夫婦
・遺言書を書くほど財産がないと思っている方
・財産がありすぎて困っている方
・うちの家族は仲がいいから安心だと思っている方
・うちの家族は仲が悪いから心配だと思っている方
・ご高齢の方
・まだまだ若い者には負けないと思っている方
・天涯孤独の方
・法事の席でどうもよく知らない親戚っぽい人を見掛ける方
・離婚、再婚を経験した方
・独身で身寄りがない方
・独身で親族が多い方
・内縁関係にある方
・何となく隠し子がいるような気がする方
・確実に隠し子がいる方
・養子縁組をした方
・音信不通や行方不明の相続人がいる方
・自慢のレコードやCDを妻にすぐ処分されそうな私など
 例を挙げれば本当にキリがありません。つまるところ遺言書を作成する必要がない方などいないという事になります。決して営業トークではありません。

◆遺言書は本当に必要なの?
 遺言書というと、揉める、揉めない、あげたい、あげたくないといった感情面に目が行きがちですが、相続開始後の面倒な手続き面から見ても、遺言書は大いに必要だと言えます。公正証書遺言で遺言執行者(遺言書の内容を実現する為に手続きをする人)を定めておけば、諸々の手続きがスムーズです。財産を受け取る人以外の承諾をもらったり、手を煩わせる事なく手続きが可能です。

 例えば、子供を持たない夫婦を例に考えてみましょう。もしもあなたが最愛の配偶者に先立たれた場合、あなた以外の相続人(配偶者の両親、兄弟、甥姪)の方に対して、様々な書類に「実印を押してください」や「印鑑証明を取ってください」などとお願いしなければならない事を考えてみてください。こうした手続き面だけをとっても、遺言書の必要性をご理解頂けるかと思います。

 徒然なるままに綴ってきましたが、概要は以上です。年の初めに考える事かどうかは別として、一度ゆっくり考えてみてください。もしも貴方が遺言書を作成しなかった場合、どうなるのか?考えてみてください。

 今現在だけでなく、家族構成が刻々と変化していく将来において、誰が相続人になる(可能性がある)のか?そして誰が面倒な手続きを片付けてくれるのか?考えてみてください。考えてもよく解らないという方は、当事務所にご相談ください。これは営業トークかもしれません。

 それでも遺言書の必要性を感じられないという方は、映画『市民ケーン』を観て、人生の意味なるものに思いを馳せてみては如何でしょうか?とはいえ、正直なところ、よく解らない映画でもあるんですが。つづく

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