「遺言を書く」ということ  2010.11.11 青山修

 めっきり寒くなりました。ゆっくり読書をする間もなく冬になってしまうかの勢いです。日本の季節は夏と冬だけになってしまうのでしょうか。また芹洋子さんのレパートリーが減ってしまうのではないかと心配になったりもします。

 以前、将来の相続トラブルを防ぐための「遺言(ゆいごん、いごん)」について書きました。「遺言を書く」ということを、次の3つのステップに分けて考えてみてください。
・ステップ1「作成」:法律上の強制力がある遺言書を作成する。
・ステップ2「保管」:将来の相続開始までの間、安全に保管する。
・ステップ3「実現」:実際の相続開始の時、遺言書の内容を実現する。

 あなたは、遺言は「とりあえず書けばもう安心」とお思いではありませんか?少し上等な便箋に思いのままを綴り、権利証や保険証券やらと一緒にタンスの奥の方に閉っておけばいいなどとお考えではありませんか?これは大きな間違いです。

 どれだけ立派なものを書いても、それがきちんと保管され、あなたが旅立った後、その内容が実現されなければ意味がありません。3つのステップのどれが欠けても、あなたの「思い」を形にする事が困難となります。言うまでもありませんが、その場に「あなたはいない」のですから。

 ここで、「遺言を書く」上での各ステップにおける留意点を簡単に見ていきましょう。
【ステップ1 遺言書を作成する】
・まずは、あまり感情的、独善的にならず、遺言の内容を冷静に考えてください。
・法律上の強制力を持たせる為には、一定の要件を満たす必要があります。
・遺留分を考慮する等、トラブルになりにくい現実的な内容の検討が必要です。
・残された遺族間の人間関係(感情面、力関係など)への配慮も必要です。
・トラブルを防ぐ為には、家族への感謝のメッセージなども効果的です。
・相続税が発生する可能性がある場合には、それなりの対応策が必要となります。

【ステップ2 遺言書を保管する】
・遺言書を相続開始の時まで長期間、安全に保管しなければなりません。
・「生前には発見され難く」、かつ「相続開始後には発見され易い」場所とは?
・隠匿、破棄等を怖れて隠し過ぎると、相続開始後に発見されないかもしれません。
・お蔵入りを危惧するあまり、分かり易い場所に保管するのも、これまた心配です。
・たとえ貸金庫に預けても、あなたが望む人が取り出してくれるとは限りません。

【ステップ3 遺言書を実現する】
・相続開始後、遺言書が発見され、その内容が実現されなければなりません。
・取り分の少ない人、口うるさい親族等が遺言の執行を妨害する事もありえます。
・相続人(受遺者)が、自ら執行事務を行うのでは負担が大きく、支障もあります。
・遺言の執行は信頼できる第三者(専門家)にお願いするのがよいでしょう。

 いささか簡単ではありますが、以上のポイントについて十分に留意の上、「遺言」についてゆっくり考えてみてはいかがですか?それが将来において、あなたの愛する家族を無用な相続トラブルから守る事に繋がるはずです。誰もが冬を愛する人のように心広き人というわけではありませんので。

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