最近は尖閣諸島の陰に隠れがちでしたが、北朝鮮における後継者問題が新たな展開を見せています。金正日総書記の三男ジョンウン氏が、朝鮮労働党代表者会で党中央委員と党中央軍事委員会副委員長に選出され、事実上の後継者となることが決まったようです。少なくとも日本のディズニーランドが大好きな長男ヨンナム氏が後継ぎでない事だけは確かなようです。
映画『ゴッドファーザー』では、マフィアのドン(M・ブランド)は長男ソニー(J・カーン)がファミリーを継ぐものと考えていましたが、結果として三男マイケル(A・パチーノ)が継ぐ事となりました。金正日総書記はかなりの映画ファンらしいですが、特に関係はないのでしょう。
ソフトバンク㈱では、孫正義社長の後継者を社内外から広く募り、10数年掛けて候補者を選抜・育成していくプロジェクトを進めています。周りが驚くような事をするのが孫社長のやり方でしょうが、このプロジェクトで本気で後継者選びをするつもりなのか、真意の程はよく分かりません。少なくとも若き日の孫正義氏だったら、このようなプロジェクトに応募していなかったのではないでしょうか。
「名選手、名監督にあらず」というわけではないのでしょうが、成功した経営者が良い後継者を選べることはごく稀であり、失敗するケースが多いようです。数年前一旦会長職に退くも、また社長にカムバックしたファーストリテイリング社の柳井氏のようなケースもありました。そもそも優れた経営者が何代も続く事の方が現実的ではないのかもしれません。
国家や大企業だけでなく、全国約400万社の中小企業(会社+個人事業者)にとって、会社の相続ともいえる「事業承継」は経営の根幹を揺るがしかねない切実な問題です。
「いかに後継者を育てる(探す)のか」いうのは本当に大きな問題です。企業には永続的な発展を目指すとともに、社員とその家族の生活を守っていくという使命があります。
親族に任せるのか、生え抜き社員から選ぶのか、外部から招聘するのか、はたまたM&Aで会社を売却するのか、従業員に受け入れられる後継者を選ぶのは容易な事ではありません。また、実際に後継者争いにでもなれば経営どころではありませんし、企業自体が疲弊してしまいます。
もう一つの大きな問題として、経営者個人として、どうやって相続税を払うのかという問題があります。日本は世界一相続税が高い国と言われています。上場企業の株式なら売却することもできるでしょうが、中小企業が自社株を売却し現金化するのは簡単ではないですし得策ともいえません。となれば、自社株買いで資金を調達したり、死亡弔慰金や死亡退職金をうまく活用して納税資金を用意するなど他の手段を講じなければなりません。生命保険を利用する事も有効と言えるでしょう。
さらには相続問題があります。たとえ生前から長男を後継ぎと決めていても、先代の死後、次男、三男が遺留分を請求してきたらどうなるでしょう。自社株や事業用資産をうまく後継者に引く継ぐ事ができなければ、会社の永続どころか、存亡さえ危うくなってしまいます。この遺留分に関しては平成21年3月から民法の特例制度が施行されていますので、また改めてお話することにします。
我が国の経済を支えている中小企業をいかに永続させていくかは、国内最優先課題の一つと言えるでしょう。中国など外資による企業買収も増えており、技術の流出も懸念されます。本来庶民の味方である市民活動家出身の菅首相には何らかの手を打ってもらいたいものです。とはいえ領土で骨抜きにされるのも、これまた心配ではありますが。